社会経済的貢献

私たちが日常生活で当然のように利用し慣れ親しんでいる物の多く、たとえば食品、清浄な飲料水、医薬品、熱と電力、建築物、輸送、エレクトロニクスなどは、その生産や性能をニッケル含有材料に依存しています。「社会におけるニッケルの貢献」はこうした社会における利点をさらに深く掘り下げ、ニッケル含有材料に代わる適切な代替材料が存在しないケースがいかに多いかを示しています。統計を見ても、ニッケルが例えばヨーロッパにとって確たる重要性を持つことは明らかです。

こうした利点は、たとえばニッケルが生み出す雇用や付加価値として数量化することができます。さらにその利点はニッケルの生産だけにとどまらず、バリューチェーンを通じて続いていきます。たとえばステンレス鋼製の上水道管を使用することは、水道管製造のための雇用のみならず、上流でのステンレス鋼製造やニッケル生産にも雇用を生み出します。社会的側面から見れば、水質の維持や設備の長寿命によって消費者は恩恵を受けます。最終的に水道管は耐用年数終了時にも大きな価値が残っているため、リサイクルを促進します。

ニッケル含有材料の使用により生まれる価値の詳しい例は、「ニッケル誌」の項目を参照。

Weinbergグループが2008年に欧州連合(EU)で実施した「ニッケルの社会経済的研究」は以下の結論を示しました。

  • ニッケル産業は、一次原料を加工する単なる産業部門の1つではなく、「何かを可能にする技術」である。高温での強度、耐食性、延性など固有の特性があるため、利用者が新しい製品や産業を作り出すのを容易にし、利用者にとっての新しいメリットを生み出し、幅広い先進的製造部門で性能向上の実現をもたらす。
  • EUの直接的なニッケル産業自体は比較的小規模であるが、バリューチェーンを通じてEU経済に多大な影響を及ぼしている。
  • EU経済に対するニッケルの影響を最も広義に解釈した場合、ニッケル産業およびそのバリューチェーンが付加する総価値は800億~1,000億ユーロを上回ると推定され、そのうち500億ユーロ前後は、ニッケルに決定的に依存する産業および用途が作り出すものと考えられる。
  • ニッケルのバリューチェーンもEUにおいて多大な雇用を支えており、その規模は125万~150万人と推定される。その内、EU内での推定69万人の雇用がニッケルに決定的に依存している。こうした雇用の多くは高度な技能を要する製造業務である。
  • 実際、EUはステンレス鋼や超合金などニッケル含有合金の生産では世界トップの位置にいる。さらにEUにおいて高技能を要する重要な「最終用途」製造部門の多くはニッケルに決定的に依存している*。こうした製造部門には、ジェットエンジンやガスタービンの製造のほか、食品および飲料、石油、化学、医薬品製造などの重要産業における加工工場設備の生産、CDやDVDのプレスなどがある。
  • しかし、ニッケルとニッケル含有プラットフォーム技術がもたらす社会経済的貢献は、EUとその市民に対して上記以外の恩恵ももたらしているにもかかわらず、このような点を政策決定者や一般市民が十分に理解していない場合も多い。
  • たとえばニッケル化合物は、EUの主要な産業部門やサービス部門(航空宇宙、自動車、石油精製、光メディアなど)の競争力を支え、EU経済の大部分に経済効率と技術革新を促し、EUの環境目標の達成を助けるという重要な役割を果たしている。

※深刻な性能低下や大幅なコスト増加をともなうことなくニッケル含有材料に代替することが不可能な部門を「ニッケルに決定的に依存する」と特定した。

以上の記述は、Weinbergグループが2004年に報告した詳細な研究に基づくもので、この研究はヨーロッパにおけるニッケルの価値を国別で明らかにしています。

フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリスに関する簡略な更新を2008年に行いました。

ニッケルは中核的な技術のいくつかを実現可能にする特に重要な役割を担っています。以下に関する詳細な研究が行われています。

  • 触媒
  • 通信
  • 洗浄剤
  • 電鋳
  • 燃料電池
  • ハイブリッドカー
  • 石油精製
  • 光メディア

以上の用途で注目すべき特徴の1つは、ニッケルが技術革新的に貢献してきたという点です。言い換えれば、ニッケルが技術革新のプラットフォームとなることが多いのです。

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