ニッケルブログ

電子廃棄物の採掘

2022年1月27日

最大級のクルーズ船を思い浮かべてください。そしてその重量を想像してみてください―実は100,000トンを超えます。今度はこれが500隻集まった場合の重量を考えてみてください。我々はこれほど膨大な量の電子廃棄物を毎年新たに排出しているのです。

グローバル電子廃棄物モニター(Global E-waste Monitor)によれば、2020年だけで53百万トン以上が排出されました。それが年々増加し、2030年には74百万トンと予測されています。しかしながら実際には電子廃棄物の約10百万トンのみがリサイクルされ、ニッケルを含む金属や他の有価素材が回収されているだけです。約550億米ドルの回収可能な素材が含まれていると推定される残り43百万トンの電子廃棄物は、リサイクルされておらず、埋め立てられています。我々が日常的に使用する携帯電話、コンピューター、テレビ、電化製品及びその他電子部品は不本意な終焉を迎えています。

複雑な回収

ニッケルは電子廃棄物に含まれますが、量はリサイクルされる個々の電子部品によります。回収はかなり複雑で、ニッケルは‘社交的金属’のため他のほとんどの金属とよく融合します。一般的にニッケル含有量はその構造物の総重量の0.5から2%であり、銅や鉄の含有量よりはるかに少なくなっています。

ニッケルはその特性から電子機器に使用されます、例として積層セラミックコンデンサ(MLCC)での使用があります。貴金属―金、パラジウム、銀―は更に少量であっても金額的には大きくなるかもしれません。しかしながら循環型経済では回収を最大化する必要があり、ニッケル協会会員はそれぞれがその役割を果たしています。

独自のプロセス

リサイクルを手掛けるニッケル生産者はそれぞれ自社のまた多くは独自の電子廃棄物処理工程を持っています。工程は前処理から始まります、というのも電子廃棄物は多くのプラスチック、セラミック及びその他の非金属素材を含んでおり、これらの処理工程は異なりますが―我々が最も関心を持っているのは金属です。

ここでも、製品に使用された鉄は磁気分離したのち製鉄所に送られ直接リサイクルが可能です。例えば、サーキットボードや携帯電話まるごとを小さな破片に破砕することで分離工程の一助となります。一部の企業では種々のタイプの電池の処理用に別のリサイクルラインがありますが、リサイクル用の電池の供給は電気自動車用電池が寿命を迎えるにつれて、急激に増えるものと見られます。

銅、ニッケル及び貴金属といった金属の回収に係わるプロセスでは乾式精錬(高温)または湿式精錬(酸による溶解)あるいはその両方が使用されます。一部の企業では電子機器に使用されるその他の金属、例えばインジウム、セレン、ビスマス及びその他微量に存在する金属の回収が可能なところもあります。

重要な原料

電子廃棄物は当協会会員の数社により30年以上処理されてきました。これは重要な原料であり、各社は今後処理量を増やす意向を持っています。この素材は、何年も前に採掘され、現在は廃棄物でですが、新しく重要な電子部品となり万人に役立つものとなります。電子廃棄物中のニッケル分は比較的少量ですが、ニッケル業界は循環型経済を作り出すとの目標を達成する上で、社会との貴重なパートナーです。

循環型経済では回収を最大化する必要があり、ニッケル協会会員はそれぞれがその役割を果たしています。

ユミコア 我社のプロセスは複雑な鉛/銅/ニッケル製錬技術に基づいており、これらのベースメタルを捕集材として使用し、貴金属やその他の金属、所謂’不純物‘とされるアンチモン、ビスマス、錫、セレン、テレル、及びインジウムを回収するものです。
住友金属鉱山 リチウムイオン電池スクラップを含む電子材スクラップは前処理をしたあと銅製錬の転炉に投入されます。その後電解工程で粗硫酸ニッケルとして分離され、ニッケル精錬所に送られ、電池の原料として使用される高純度の硫酸ニッケルとなります。
アウルビス 我社は最新のモジュール構造のリサイクルシステムにより、市場及びニーズに非常に柔軟に対応が可能であり、従って素材循環サイクルにより多くの金属含有素材を提供することができます。
ヴァーレ Vale社は従来リサイクル素材を乾式精錬で処理してきましたが、湿式精錬による方法も検討しております。わが社はこの素材を処理するいくつかの選択肢を持つしっかりした工程を持っており、引き続きBlack Mass(電極混合物)‘の処理能力を高める所存です。
ボリーデン 我社の北スウエーデンにあるロンスカ―精錬所は世界最大の電子材料から金属をリサイクルする施設です。この施設では排出物を極小化し、また電子材料を利用した地域暖房も行っております。
グレンコア 我社は1990年代より百万トン以上の電子材スクラップをリサイクルさせています。

この記事は、2021年12月の弊協会ニッケル誌VOL.36-3に掲載されたものです。


エネルギー効率化、大気・水質汚染物質の排出削減、土地の開拓と再植林、廃棄物管理、再生金属の使用拡大など、環境・社会・ガバナンスレベルでNIメンバーが行っている行動や、コミュニティへの取り組み、労働安全衛生対策、人権戦略などの詳細についてご紹介します。

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