ニッケルブログ

REACHの10年間:
REACH文書一式更新の管理について私たちが学んだ5つのこと

2021年12月17日

欧州REACH規則の導入から10年以上が経ちました。NiPERAのTara Lyons-Dardenが、ニッケルREACHコンソーシアムの観点から、これまでを振り返り、REACH文書一式を維持する上で学んだことと課題を共有します。

欧州REACH(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する)規則が2007年に施行された際、その主な目的の1つは、欧州で年間1トンを超えて輸入または製造される化学物質の物理的特性、毒性、製造、使用に関する情報のデータベースを構築することであり、化学物質の安全な製造と使用を可能にすることが総体的な目標でした。

REACHの主要目的は、代替試験方法の推進を含む、人の健康と環境に対する高度な保護とともに、域内市場における物質の自由な流通、競争力と革新性の強化を確保することである。欧州委員会

EU市場への継続的なアクセスを確保するために、最も厳重な分類に該当する大量の化学物質については、最初の期限である2010年の初期期限までに欧州化学機関(ECHA)に当該の化学物質を登録する必要がありました。

この10年間、ニッケル REACH コンソーシアムは、契約対象の13ニッケル物質について、共同登録文書の質の継続的な改善と強化に取り組んできました。これは、新たな科学的発展や新規に入手可能となった情報を評価することにより、登録文書を絶えず改善するというREACH義務に沿ったものでした。

同文書の大半は、2010年以降、毎年更新されてきました。更新には、新規または改訂された組成、分類、毒性データ、暴露評価が含まれます。

ECHAは、これまで、新規または更新ガイダンス文書(例:Read-Across 評価の枠組み)、推奨事項、規則の改正、そして、最近の金属・無機物セクター別アプローチ(Metals and Inorganic Sectoral Approach)(MISA)を始めとする共同計画に基づく追加更新に伴い、数々のイニシアチブを導入してきました。ここでは、過去10年間を振り返り、ニッケルREACH登録文書の定期的な年次更新で学んだヒントの中からトップ5を共有したいと思います。

1.

準備しておく:通常工程を導入しましょう

とても単純なことに思えるかもしれませんが、REACH文書一式のように複雑なファイルでは、計画されている更新のために行うべき全タスクのリストを準備しておくことが非常に重要であると早い段階で学んだのです。まずは、予定の時間内にタスクを達成する上で必要なコスト、時間、人材を決定します。さらに、特定された各タスクに担当者と期限を割り当てましょう。気をつけなくてはならないのが、完了したタスクの内部レビューに間に合うように構築することです。また、このステップには、最近公開された“文書一式更新に関する規則の実施” (EU/2020/1435)に指定されているタイミングに基づき、新情報をいつどのように受け取り、評価し、REACH更新に組み込むかについての通常工程も含める必要があります。

2.

早期に着手する:先を見越して動きましょう

新要件が適用されたり、新ガイダンスが利用可能になったりしたらすぐに、文書一式に導入する方法を検討し始めます。可能であれば、時間枠をいくつかのフェーズに分けましょう。規則や執行のプレッシャーを待つのではなく、書類を継続的に改善するよう努めてください。常に、更新に対する現計画の1〜2年先を見据えて考え、先回りして新規則の傾向や今後のガイダンスに備えるようにしましょう。定期的に更新される文書一式内の分野に加え、新規または更新された問題固有のガイダンスや推奨事項に関しても実行リストを保持します。

3.

協力する:主要な利害関係者と明確かつ定期的にコミュニケーションを図りましょう

REACH文書一式は、化学的特性、毒性情報、使用・曝露情報、リスク管理に関する広範なデータベースを含み、大量で複雑になりがちです。こういったさまざまな分野に及ぶ専門知識を要することから、チームワークの重要性が強調されます。タスクの完了を確認し、関係書類の登録者、川下ユーザー、外部コンサルタントと明確なコミュニケーションを図る中核チームを設置して、正確な情報が間違いなく組み込まれるようにしましょう。更新を順調に進めるには、内外の関係者内、関係者間における定期的なコミュニケーションと協力が欠かせません。

4.

説明を受ける:ECHAと対話しましょう

不明な点や特定の問題にどう対処すればよいのかについて助言や提案が必要な場合には、ためらうことなくECHAに問い合わせましょう。

私たちは、ECHAヘルプデスク、IUCLID LinkedInページ、ECHAウェビナー、MISAワークショップを介してのECHAとの詳細な協議、さらにはコンソーシアムや登録者から持ち掛けたECHA代表者との電話会議でさえ、書類一式の特定の側面について話し合うのに役立つリソースであることに気づかされました。

5.

説明を受ける:ECHAと対話しましょう

グループ化や分類の変更など、諸課題に対する自らのアプローチについては、必ず、詳細と正当性を含めるようにしましょう。可能な限り、いろいろな解釈が可能となる余地を残さないようにします。目標は、可能な限りの透明性と徹底性を確保することです。

私たちの13のニッケルREACH文書一式は、13のIUCLIDファイル(それぞれ23 MB以上)と13の化学物質安全性レポート(それぞれ1,000ページ以上)で構成されており、計198の暴露シナリオ、各文書一式に少なくとも19の補足付録、3万部をはるかに超える、過去10年間に関連性について審査された公開文書が含まれています。

REACHは化学物質の生産者に多くを要求しています。ニッケルREACHコンソーシアムの対象となる化学物質の文書を登録し、最新の状態に保つのは膨大な作業でした。

それでも、最終的には、私たちが担当した化学物質には利用可能なデータが豊富に付属されていると確信し、満足しています。これらのデータは、我々全員の利益のために、安全な製造と使用を可能にし、競争力と革新性を高めるべく物質固有の特性を提供できるようにしているのです。

ここで紹介した5つのヒントは、これまでの10年間、私たちが年次文書の更新準備にあたり実践してきたことです。みなさんの文書更新工程を容易楽にし、欧州市場へのアクセスを確実にする上で役立つことを願ってやみません。

https://www.nickelconsortia.eu/

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