ニッケルブログ

EV市場の違い:興味深い日本の事例

2021年10月14日

日本はガソリンハイブリッド車製造における先駆者でしたが、EVによってもたらされた変革の流れに対して、ある種のためらいをが感じられます。

中国、欧州、米国でEV市場が飛躍的に成長するなか、日本はEV販売で後れを取っていました。日本のEV普及率は1%と、世界平均の4%を下回っており、欧州の10%に比べるとかなり低いように見えます。トヨタ、ホンダ、日産といった世界最大の自動車メーカーが日系企業であり、自動車界の名だたる存在であることを考えると、なんとなくピンときません。

緩い禁止措置?

2050年カーボンニュートラルの実現に向けた計画を概説した日本のグリーン成長戦略によると、日本はガソリン車の新車販売を2030年半ばまでに段階的に廃止する予定です。ただ、ハイブリッド車よりも電気自動車(BEV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)を優先するという点においては、この計画は具体的ではありません1

日本のガソリン車の新車販売禁止措置では、ハイブリッド・モーターが搭載されている限り、ガソリン車の販売が認められてしまうのです。純粋なバッテリー電気駆動車の支持者達は、これではガソリン車が全体的にほんの少し効率的になっただけなので、たわごとに他ならず、ません。このように緩い禁止措置では気候変動への取り組みに真剣に貢献できないため、日本の自動車メーカーは技術競争でさらに後れを取り続けることとなり、その支配を危うくするものだと主張しています。

後発者のアドバンテージ

日本の自動車メーカーは、長期的な電気自動車の収益性と環境優位性に懐疑的ですが、静観するという短中期的アプローチによって、消費者の選択と海外の規制制度がどのように進む化するのかを理解する上で十分な時間を得ることができます。後発者のアドバンテージ後行者利益がハイブリッド技術に対する自社と国の莫大な投資を回収するのに十分な時間を与えてくれるのです。これによって、今後数年間で電池のコストが100ドル/kWh未満に下がったら、チャンスに乗じることも可能です。さらに、グリーンなブランドイメージを最も長い間享受してきた日本のいくつかの最大手自動車メーカーの一部には、グリーンなブランドイメージを最も長い間享受してきた輝かしい過去の栄光という恩恵もあります。

日本の自動車メーカーの後行者戦略の根底には、最悪の場合でも、先進国では自社の健全な財務状態とマーケティング予算により、EVの流れに乗ることができるという確信があるのです。日本の自動車メーカーの多くは、電力供給が不安定な発展途上市場で強力な存在感を示しており、ハイブリッドの方がこういった市場に適している可能性もあります。つまり、日本の自動車メーカーは、日本をはるかに超えたEV市場の幅広い理解に依存しているのです。

日本の自動車メーカーは、日本をはるかに超えたEV市場の幅広い理解に依存しているのです。

消費者の選択

また、内燃機関車から遠ざかっていくにつれて幅広い推進システムの選択肢を提供した方が消費者にとってより有益だという信念もあります。ICE、HEV、BEV、PHEV、FCEVなど、利用可能な各種代替手段は、順応性が求められ、顧客のニーズを満たさなくてはなりません。例えば、日本のEV数が少ないのは、日本市場に適したEVを入手できないこと、充電スポットの設置が不可能な日本の住宅事情、自動車購入に慎重な国民性に起因しているのです。

日本は、テスラ モデル3がEV補助金と同時期に実施された値下げを受けて国内販売が1300%増加した最近まで、テスラですら浸透するのが難しい市場でした。日本の顧客は、「おもてなし(人々のニーズを予測して満たす、手厚い接遇の精神)」のコンセプトに根ざし、すぐに利用できる顧客サービスを期待して、海外ブランドをためらい、国内ブランドを好んできました。テスラが日本市場の壁を打ち破ったというには時機尚早ですが、若年層の顧客の心を捉えたのは確かです。

この消費者の関心の再燃によって、日本の国内自動車メーカーが最終的に追いつく結果になるのか、それとも別の道をたどる結果になるのかは、時がたてば明らかになるでしょう。

(※1)05_automobile.pdf (meti.go.jp)

※ニッケル協会東京事務所追記
日本においてEVの普及が進みにくい背景には様々な理由があり、本コラムの推察と必ずしも一致しないものがあるかもしれませんが、海外から日本を眺めた場合、このように見えることもある、という一つの意見としてご覧いただければと思います。

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