電池技術の基本用語

電池は化学エネルギーを電気エネルギーに、および電気エネルギーを化学エネルギーに変換する装置です。このセクションは、ハイブリッド車 (HV)、プラグインハイブリッド車 (PHEV)、電気自動車 (EV) の電池の説明・分類・比較に使用される専門用語を紹介しています。基本的な背景知識を提供し、電池の動作状態の特性を示すために使用される用語を定義し、電池の公称および最大特性を示すために使用されるメーカーの仕様を説明します。

電池の基本

ハイブリッド車と電気自動車は、直列と並列で接続された個々のモジュールとセルで構成される高電圧電池パックを備えています。セルは電池の最小のパッケージ形式で、一般的におよそ1~6 ボルト (V) です。モジュールは一般的に直列か並列で接続された複数のセルで構成されます。電池パックは複数のモジュールを一緒に直列か並列のいずれかで接続して構成されます。

たとえ同じ化学組成の電池であっても、すべての電池がまったく同じに作られるというわけではありません。電池開発の主なトレードオフは、電力とエネルギーです。電池は高電力または高エネルギーのいずれかで、両方ではありません。多くの場合、メーカーはこれらのカテゴリーを使用して電池を分類します。他の一般的な分類は高耐久性で、電力とエネルギーを消費してバッテリー寿命をより長くするために化学組成が改良されたことを意味します。

電池を説明する上で、電池容量に対して規格化するために放電電流はCレートで表されることが多く、電池によって大きく異なる場合が多いです。Cレートは、最大容量に対して電池が放電される速さを示すものです。1Cレートとは放電電流が1時間で電池の全容量を放電することを意味します。100アンペア (A) 時の容量の電池なら、100 Aの放電電流で放電することを意味します。この電池の5Cレートは500 A、C/2レートは50 Aになります。同様に、Eレートは放電電力を表します。1Eレートとは1時間で電池の全容量を放電する放電電力(※1)です。
※1:電流と電圧と電力の違いは、電流が回路の中を流れている電子などの電気を帯びている粒子の量を指し、電圧はその電気を帯びている電子などの粒子を流そうとする圧力のことを指す。電力は発電機で電流を流すために使っているパワーの量。

意外に思うかもしれませんが、ハイブリッド車、プラグイン車、電気自動車用の電池はすべて二次電池です。一次電池は充電できない電池です。二次電池は充電できる電池です。

電池の状態

現在の電池の状態を説明するために使用される用語の一部について説明します。

最大容量に対する比として現在の電池容量を表します。SOCは一般的に時間の経過に応じて電池容量の変化を決定するために、現在の電流積算(法)(※2)を使用して算出されます。
※2:電流を時間で積分していくことで、電気量を求める方法。電流積算法で求められた値を積算電流値と呼ぶ。

最大容量に対する放電された電池容量の比(※3)。DOD 80% 以上の放電は深い放電とされます。
※3:DODは電池について、完全充電状態の何%まで放電を行うかを表す。

負荷を接続したときの端子間の電圧。端子電圧はSOCと放電/充電電流によって変化します。

電池内部における抵抗。一般的に、充電と放電で異なります。また、電池の充電状態に左右されます。内部抵抗が大きくなるにつれて電池効率は下がり、充電エネルギーの多くが熱に変換されるので、熱安定性が下がります。

電池内部における抵抗。一般的に、充電と放電で異なります。また、電池の充電状態に左右されます。内部抵抗が大きくなるにつれて電池効率は下がり、充電エネルギーの多くが熱に変換されるので、熱安定性が下がります。

電池の技術仕様

電池のセル、モジュール、パックなど電池の技術仕様書に記載されている用語について説明します。

仕様書で報告される、または目安となる電池の電圧。また、電池の「通常の」電圧と考えられることもあります。つまり電池を通常使用した場合に、両端子間で得られる電圧の目安です。

放電を行える最低電圧。一般的に、電池の「空」状態を定義するのはこの電圧です。

電量の容量。規定の放電電流(Cレートとする)で、完全充電から終止電圧まで電池が放電されたときに取り出せる合計電気量(アンペア時)。容量は放電電流(アンペア)と放電時間(時間)を乗算して算出され、Cレートが上がると減少します。Ah容量ともいう。

電池のエネルギー容量。電池が規定の放電電流(Cレートとする)で完全充電から終止電圧まで放電されたときに取り出せる合計作業量(ワット時(Wh))。エネルギーは放電電力(ワット)と放電時間(時間)を乗算して算出します。容量と同様に、Cレートが上がるとエネルギーは減少します。ワット時定格量(Wh容量)ともいい、Wh = Ah x V で表せる。

一定の性能基準を満たす電池の充放電サイクル(回数)の数値。サイクル寿命は規定の充放電の条件で想定されます。電池の実際の動作寿命はサイクルの速度と深度、温度や湿度などの他の条件に左右され、DODが深いほどサイクル寿命は短くなります。

単位質量あたりの公称電池エネルギー。「質量エネルギー密度」とも呼ばれます。つまり、ある質量あたりにどれくらいエネルギーが詰まっているかを示す指標です。質量エネルギー密度は電池の化学組成とパッケージの特徴です。電気自動車のエネルギー消費量で、一定の航続距離を満たすために求められる電池の重量が決定されます。

単位質量あたりの取り出せる最大電力。電力密度(出力密度)は電池の化学組成とパッケージングの特徴です。一定の性能目標を達成するために求められる電池の重量を決定します。エネルギー密度と出力密度との間には一般に相反する関係があり、一方を大きくしようとすると他方が小さくなる傾向があります。

単位体積あたりの公称電池エネルギー。「体積エネルギー密度」とも呼ばれます。つまり、ある体積あたりにどれくらいエネルギーが詰まっているかを示す指標です。エネルギー密度は電池の化学組成とパッケージの特徴です。電気自動車のエネルギー消費で、一定の航続距離を満たすために求められる電池の大きさを決定します。

単位容積あたりの取り出せる最大電力。電力密度(出力密度)は電池の化学組成とパッケージの特徴です。一定の性能目標を達成するために求められる電池の大きさを決定します。エネルギー密度と出力密度との間には一般に相反する関係があり、一方を大きくしようとすると他方が小さくなる傾向があります。

電池が連続して放電される最大電流。通常この制限は、電池の劣化や容量減少の原因となる過度な放電率になることを防ぐため、電池メーカーによって定められています。モーターの最大連続出力と共に、これが車の持続可能な最高速度と最高加速を決定します。

最大30秒のパルス(※4)で電池が放電される最大電流。通常この制限は、電池の劣化や容量減少の原因となる過度な放電率になることを防ぐため、電池メーカーによって定められています。電動モーターのピーク出力と共に、これは自動車の加速性能(時速0~60マイル時)を決定します。
※4:パルス放電とは、二次電池の放電方式のひとつ。最近の機器は回路動作がデジタル化され、回路電流もパルス状の波形になっている。

満充電状態に充電された電池の電圧。充電スキームは通常、電池の電圧が充電電圧に達するまで定電流充電した後に定電圧充電するという構成で、充電電流が非常に小さくなるよう徐々に減少させます。

100%のSOCに充電された後、電池が維持される電圧。電池の自己放電を補うことによって満充電の容量を維持するための電圧です。浮動充電は、蓄電池に対し充電回路と負荷が常に並列接続されたままの状態で充電する充電方式で、この充電方式では、蓄電池は常に充電と放電が継続した状態となりかつ満充電が維持されます。

定電圧充電に移る前の定充電で電池が最初に(約70%SOCまで)充電される理想的な電流。

電池内部における抵抗は一般的に、充電と放電で異なります。

上記の技術仕様はMIT Electric Vehicle Team: MIT Electric Vehicle Team (2008)の許可を得た上で使用しています。

電池の技術仕様を理解するための手引き(原本)
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