2023年2月24日
全世界の産業が二酸化炭素排出の削減を図る一方、炭素隔離をすることで大気中への排出を抑制する努力も行われています。これらの技術は二酸化炭素回収・貯留(CCS)として知られています。
人為的に生じた温室効果ガスの排出をゼロにするという目的を実現するため、ニッケル協会は引き続きニッケルがCCSの実現に向けてどのような貢献と重要な役割を果たせるかを探って行きます。
この取り組みには綿密な計画に基づく炭素回収、輸送から地下貯蔵を含むCCS全体のバリューチェーンが含まれます。
より高品質鋼を使用
腐食及び適正な素材選択はCCSインフラの、安全で、信頼性の高い、経済的な運営の確立にとり重要な関心事項です。
多くのCCS工程は遊離水の存在と低温下にあるため、結果として酸性状態になり腐食のリスクに晒されます。従って炭素鋼は適さず、より高品質のニッケル含有ステンレス鋼及びニッケル合金が必要となります。
ガスから二酸化炭素を回収する際、多くの場合燃焼行程から生じる水分が含まれます。回収工程は高湿な酸性状態での稼働か、さもなければ事前の乾燥が必要となります。高温で厳しい環境下での工程もあり、この場合も炭素鋼は不適切です。
輸送する
二酸化炭素の回収から地下貯留庫までの輸送は基本的にパイプライン、船舶、トラック及び鉄道で行われます。隔離場所の地下貯留地に輸送するために二酸化炭素は液化されます。この輸送に使用される機材にはやはり低ニッケル合金鋼、ステンレス鋼またはニッケル合金が必要です。
地下への貯留
地下貯留庫に注入される二酸化炭素は通常乾燥しており腐食性はありません。しかしながら寿命中に酸性状態が生じ腐食するリスクに対応できる井戸の設計が必要となります。
米国及びEUの井戸デザインのデータから腐食のリスクのある井戸インフラに関しては通常ニッケル含有ステンレス鋼およびニッケル合金が使用されることが分かります。米国では、CO2 注入井戸の設計と施工に関して、材料の選定を重視した明確なガイドラインを定めており、CO2 の地下貯留においてニッケルが重要な役割を果たしていることを裏付けています。
CCS工程における素材選択に資するため、素材防食技術・構造物塗装性能検査協会(The Association for Materials Protection and Performance (AMPP))はニッケル含有素材が好ましい領域を示した、二酸化炭素輸送と注入における素材選択と防食のガイドライン(Guidelines for Materials Selection and Corrosion Control for CO² Transport and Injection)を作成中です。
産業界がCCSバリューチェーンを評価するにつれ、低ニッケル含有合金鋼、ステンレス鋼またはニッケル合金が不要な段階はほぼないことが明らかになっています。これは今後数年数十年にわたり人為的温室効果ガス排出のネットゼロを達成するべくCCSを展開する際ニッケルの果たす重要な役割を示しています。
ニッケルが“不可欠要素”となるのは?
この記事は、2022年12月発行の弊社ニッケルマガジン VOL37-3に掲載されたものです。
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