ニッケルブログ

耐候性鋼に日が当たる時

2022年9月28日

太陽エネルギーという新しい作物を生み出すソーラーファームが、世界中のフィールドで開花しています。ソーラーパネルで構成される太陽光発電(PV)システムは、再生可能エネルギー技術の中で、急速に最も認知度の高い技術になりつつあります。

一般的な太陽光発電パネルの構造はソーラーグレードの結晶シリコン層とガラス保護層で構成されており、合金フレームで一体化されています。

ニッケルは、太陽光発電システムの太陽エネルギーの利用において直接的な役割を果たしているわけではありませんが、太陽光を最適に取り込むために太陽電池パネルを太陽に向けて支える構造体として、間接的な形で重要な役割を担うことが可能です。

ソーラーパネルの架台材料の特性としては、強度、靭性、耐腐食性が重要となります。太陽電池の設計寿命である30年程度を実現するだけの耐久性があり、メンテナンスコストが少なく、環境問題を起こさないものでなければなりません。

従来、太陽光発電用架台はアルミニウムや溶融亜鉛メッキ鋼板、時にはステンレス鋼で作られていましたが、近年、中国では耐候性鋼(COR-TEN®鋼と呼ばれることが多い)が選択されるようになってきました。

架台は、地上設置用の杭、脚、柱、梁、レール、クランプなどの組立治具で構成されています。
© GNEE (Tianjin) Multinational Trade Co.,Ltd

素材 - 長所と短所

中国では、太陽光発電用架台の約50%が溶融亜鉛メッキ鋼板、40%がアルミニウムで作られています。少量ですが、ステンレス鋼やガラス繊維強化プラスチックもあります。

アルミ

溶融亜鉛メッキ鋼板に比べ、アルミは引張強度が比較的低く、耐食性は良いのですが、高コストです。また、アルミは耐食性を高めるために表面処理が必要です。通常は、風力荷重が小さく、あまりメンテナンスを必要としない住宅用太陽光発電パネルに使用されます。

亜鉛メッキ鋼板

亜鉛メッキ鋼板は高い強度があることから、通常は風力荷重の大きな地域で使用されます。耐食性を高めるためには溶融亜鉛メッキが必要ですが、定期的なメンテナンスが必要で、環境面でも懸念があります。

ステンレス鋼

ステンレス鋼もまた強度や耐食性に優れ太陽光発電の架台に適していますが、コストが高くなるため、あまり多くは採用されていません。

耐候性鋼

最近、耐候性鋼は中国のいくつかの注目されている太陽光発電で使用されており、他の地域でも有望視されています。これはCr、Cu、Niを少量添加することで、表面に酸化被膜を形成し、スポーリング(錆の剥離による金属損失)を防止した高強度鋼です。

一般的な炭素鋼に比べ耐候性に優れ、塗装や亜鉛メッキなどの保護膜を必要としません。耐候性鋼はアルミや亜鉛メッキ鋼板に比べ、コストが低く、メンテナンスが不要です。

中国の太陽光発電用架台の新規格であるNB/T 10642-2021では、推奨材料の一つとして耐候性鋼が規定されています。耐候性鋼に含まれるニッケルの量は0.1~0.65%程度と少ないものの、今後数十年間に建てられるソーラーパネルの数を考えると、ニッケルの総トン数はかなり多くなる可能性があります。この比較的少量のニッケルは、太陽光発電の架台用途で耐候性鋼の耐食性を高めるために不可欠です。

この記事は、2022年4月に弊協会のニッケルマガジン第37号第2巻に掲載されたものです。

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