ニッケルブログ

充電器の未来

2021年7月13日

充電インフラは、EV革命の屋台骨です。E-モビリティへの移行によってもたらされた道路輸送における変革が、どのように画期的な変化をバリューチェーンに引き起こしているのか、Parul Chhabraが解説します。

国際エネルギー機関(IEA)のグローバルEV アウトルック2021 によると、2020年、世界のEVフリートは80 TWhを超える電力を消費したものの、EVからの電力需要が現在の世界の総最終消費量に占める割合は約1%にすぎません。EVの電力需要は、2030年までに世界の電力総最終消費量の少なくとも2%を占めるようになるでしょう。EVの販売台数が増加しても、総電力需要が大幅に増加する可能性は低いと言えます。何が必要かというと、EVに電力を供給する充電インフラの急増なのです。

2020年、世界中で走行していた電気自動車は、1,000万台に上りました。2025年までに自動車販売台数へのは年間1,400万台近く、普及率は15%になると推定されています。IEAによると、2020年のプライベート充電器の推定台数は950万台でした。その設置場所は住宅が70%を超え、残りは職場となっています。これとは対照的に、2020年の公的にアクセス可能な小型電気自動車向けの低速および高速充電器の総数は130万台にとどまり、その大半が低速に分類されていました[1]。EV台数の増加に伴い、より多くのEV充電ステーションとインフラが必要となるのは明白です。

EVドライバーの安心を確保する上で望まれるのは、高速充電器の拡充でしょう。これによって、長距離走行が可能となるだけでなく、プライベート充電器や家庭用充電器を利用できない消費者であっても、いつでもEVを使用できる状態に保てるようになるからです。利用しやすく、手軽にアクセスできる充電インフラは、航続距離、コスト、安​​全性という3本柱の領域外ではありますが、EVの魅力をさらに高めることになります。

消費者の多様なニーズを満たすために、もう一つの側面を加えるのが、充電インフラ関連のサービス内容に対する嗜好です。消費者の大多数は、エンジン車両に燃料を補給する際と同じような利便性を求めるでしょう。すなわち、ダッシュボードにバッテリー残量低下の警告インジケーターが表示されたらすぐに、またはその直前に最寄りの充電ステーションに駆け込む消費者です。また、特に充電サービスが小売業者によって提供されている場合には、価格に敏感な消費者がいれば、ポイントをためて交換するために顧客ロイヤルティ関連のメリットを重視する消費者もいるでしょう。さらには、自分の二酸化炭素排出量を気にかけ、EVに供給される充電やメンテナンスの“質”を重視する消費者もいます。

EV消費者は、エンジン車両に燃料を補給する際と同等の利便性を求めるでしょう。

EVが地域ごとに異なるペースで成長していくなか、EV用公共充電設備の需要と可用性もまた一律ではない上、政府、消費者に加えて、数々の市場参加者からも影響を受けることになります。バリューチェーンは、公益事業、石油・ガス大手、自動車会社、小売業者、E-モビリティサービスプロバイダー、EV充電ステーションプロバイダー、充電ポイントオペレーター、充電アプリ開発者と複雑極まりありません。これらすべてが、同市場の可能性を認識し、中核事業をeモビリティ分野に適応させ、EV充電エコシステムにおける競争に役立つソリューションを見いだすべくEV市場に大規模に投資している、主要な利害関係者として現在出現している段階なのです。

政府の役割は、充電インフラの展開を一層加速させる上で極めて重要となります

これらの市場参加者に政策、規則、奨励プログラム等の形で包括的な支援を提供するのが政府の役割となります。こうすることにより、充電インフラの展開を一層加速させる上で極めて重要な役割を果たすことになるでしょう。考え方としては、多様な消費者のニーズに適合する、自立した競争力のある充電インフラにするということです。

数百万台のEVに燃料を供給すべく従来型の充電インフラが配備されていくなか、簡単かつ高速な充電の未来を告げる奇抜な革新の例もお目見えしています。SFが現実と化す典型的な一例を挙げると、イスラエルの会社、ElectReon Wirelessがイタリアのミラノ~ブレシア間に建設している、全長0.6マイル(1 km)のEV用無線給電高速道路です。同社は、この技術を試験し、広範に導入することを目指しています。すでに最近、スウェーデン、ストックホルムのアーランダ空港と物流サイトの間に全長1.2マイル(1.9 km)の自動車とトラックを充電する初の給電道路が開通してはいますが、イタリアにおける試みは高速道路として初の事例となります。

電気自動車向けの給電高速道路や給電道路の大規模導入はまだまだ先の話かもしれませんが、次のEV充電ポイントを探し回る必要なく、高速道路を快適に走行できるようになれば、EVドライバー全員の夢が叶うことになります。

ElectReon は、走行中のEVに無線給電できる道路を建設中です。無線給電道路技術は電磁誘導に基づくもので、銅コイルが車道の下に敷設されており、このコイルが、電気自動車に取り付けられた受信器にエネルギーを転送します。同技術によって、走行中の充電が可能となり、大型バッテリーの必要性が軽減されることになります。 ©ElectReon

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