ニッケルブログ

パイプラインに使用される耐食性合金

2021年6月22日

上流・中流に属する石油・ガス産業では、フローラインやライザーに、ニッケル含有耐食性合金が使われています。 この合金がいかに市場において認められているかを、オートクンプ社の海洋・エネルギー担当リードテクニカルマネージャー、Rodrigo Signorelli氏に解説していただきます。

ニッケル含有合金の耐食性は、再生可能エネルギーから化石燃料に至るまで、エネルギー関連の幅広い用途に有益です。社会が再生可能エネルギー源に切り替えていく現在も、石油・ガス向けのニーズが継続しています。

石油・ガスのエンジニアは、メカニカリー・ラインド・パイプ(MLP)、クラッドパイプに基づくパイプラインに加え、フレキシブルパイプやライザーに耐食性合金(CRA)を使用しています。

クラッドとMLPは、どちらも、溶接またはボルト止めされた標準長12メートルのソリッドパイプとして提供されます。いずれの場合も、CRAの薄層が耐食性を、炭素鋼シェルが強度を提供します。ただ、この2種類のパイプには大きな違いがあるのです。

Cold rolled coil stock - © Outokumpu

クラッドパイプとメカニカリー・ラインド・パイプ(MLP)

クラッドパイプでは、CRAと炭素鋼が、圧延装置による圧着、爆発圧着、または肉盛溶接を介して形成される金属結合により接合されます。このクラッドプレートを専門のパイプ加工会社が購入し、石油会社に設計・調達・建設(EPC)などのサービスを提供する請負業者にパイプや継手を成形加工し、納入することになります。

一方のMLPは、炭素鋼パイプに耐食性ライナーを挿入することによって作られています。油圧または機械的な力で機械的に接合された後に、ライナーを両端で所定の位置に溶接することによって層を共に密封し、侵入を防ぐ仕組みです。

MLPの方がコストは抑えられますが、クラッドパイプは金属結合によって性能が保証されます。これは、特に高圧パイプラインや敏感な環境において重要です。

Cold rolling produces stainless steel to tight tolerances - ©Outokumpu

フレキシブルパイプ

オフショアパイプラインの場合には、フレキシブルパイプの使用も可能で、オフショアにおける接合作業が軽減される長尺でEPCに供給されるという利点があります。フレキシブルパイプは、海底でのフローラインやライザーとして使用され、波や潮の動きに対応可能です。

フレキシブルパイプの製造は高度に専門化されています。相手先ブランド製造(OEM)は、設計・施工に対して各社独自のアプローチを取っていますが、どこも、強度と柔軟性を提供するために複数層を採用しています。

CRAの帯板は、フレキシブルパイプの内部カーカスを作るために使用されます。パイプを作り出すために、らせん状にかみ合う特別な輪郭に形成された上で、強度と柔軟性を提供する外層が付加されることになります。

Strip coil is used to produce flexible pipe and longitudinally welded tube for umbilica - © Outokumpu

認証

認証は、石油・ガス産業に材料を供給する上で鍵となるものです。特にフレキシブルパイプについては、CRAの輪郭が完璧にかみ合わなくてはならないことから、そう言えるでしょう。従って、材料は、機械的性能、寸法公差、品質、一貫性に関する極めて高度な仕様を満たさなくてはなりません。

さらに、オートクンプ社の製造所では、石油会社やパイプOEMが設定する社内の材料仕様・基準を満たさなくてはならないケースが少なくありません。これによって、プロジェクト管理に厳格なアプローチが要求される、複雑な組み合わせの仕様が創出されることになります。当社では20年以上にわたりこれを開発してきました。

Melt shop, Avesta - © Outokumpu

最適な合金の選択

今日の石油・ガス事業者は、ラインのオーバーエンジニアリングを避けたいと考えています。エンジニアが検討するのは、適切な価格、または、より少ない二酸化炭素排出量で適切なレベルの耐食性を達成する、より広範な合金です。選択肢をプロジェクトごとに検討することになります。

浅海で使用されるMLP、クラッドパイプ、フレキシブルパイプの場合、高強度性は必要不可欠ではありません。316L(S31603)などのステンレス鋼グレード、または、最低2.5%のモリブデンを含有する欧州規格品が広く使用されています。油田の状態と油層によっては、Ultra 6XN(N08367)やUltra 254 SMO(S31254)といった6%のモリブデンを含有するスーパーオーステナイト系ステンレス鋼が適している場合もあるでしょう。また、サワーガス用には、ニッケル含有量が比較的高いUltra 904L(N08904)やUltra Alloy 825(N08825)などの合金が使用されます。

フレキシブルパイプ向けにCRAを選択する際には、海の深さと要求される耐食性に左右されることになります。頻繁に使用されているのは二相鋼と超二相鋼で、深海プロジェクトにおいて水圧に抵抗する上で欠くことのできない高度な機械的強度を誇り、含有されているニッケルが耐食性をサポートする合金です。

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