ニッケルブログ

中国の第14次五カ年計画はニッケルにとって何を意味するのか?

2021年6月8日

2021年、中国は第14次五カ年計画を始動させました。この計画の下、急速な経済成長の時代から国家の経済構造と国民の生活水準の改善に移行することを目指しています。

基本計画

第14次五カ年計画(同計画)は、社会・経済発展目標を総力的に実現するために政府当局と市場関係者の双方を導く、一連の国家戦略、戦略的優先事項、主要プロジェクトを整理・統合するものです。19編65章からなる同計画は、 国民生活のあらゆる側面を取り扱っています。ニッケルについて明言されてはいませんが、同計画の多くの側面がニッケルとその適用に影響を及ぼすことになります。

戦略的関連性

同計画では、製造強国戦略、新都市化戦略、農村再生戦略、協調地域開発戦略、世界をリードする輸送戦略、内需拡大戦略、双循環戦略、美しい中国戦略、健康中国戦略、国家安全保障戦略といった複数のアプローチが繰り返し言及されています。

これらのイニシアチブは共に、革新的、協調的、グリーン、オープン、インクルーシブな手法で、中国の発展形態を“高速”から“高品質”に切り替えることを目的としています。“高品質”な発展は、製造の卓越性、内需創出、環境品質の改善、人の健康保護という 4つの戦略的優先事項に固定されていますが、ニッケルとニッケル含有材料は、その固有の特性で貢献できることが証明されています。

ニッケルとニッケル含有材料の貢献が証明されている4つの戦略的優先事項

製造の卓越性 内需創出
環境品質の向上 人の健康保護

また、第 14次五カ年計画は、近代的なサプライチェーン管理が製造の卓越性を達成する鍵であることも明らかにしています。これは、新エネルギー、新材料、ハイエンド機器、新エネルギー車(NEV)、宇宙、航空、さらには、オフショアエンジニアリング機器を含む戦略的新興産業(S&EI)の発展に焦点を当てるものです。成長に対する究極の解決策は、都市化、インフラストラクチャーに加え、輸送、クリーンエネルギー、水力工学の大規模プロジェクトを通して創出される内需なのです。

電力、産業、輸送、建築といった主要部門の脱炭素化を推進すべく、エネルギー消費と CO2 排出量に関する規制目標が設定されました。また、同計画では、人の健康を保護するリスク評価・管理のために強化された法律の制定と執行も要求されています。

定量化可能な機会

同計画では、主要な成長指標の定量的目標が設定され、より多くの投資がS&EI、新都市化、大規模プロジェクトに向けられています。これによって、ステンレス鋼、金属合金、工業用化学品といった形でニッケルに数々の機会が生まれるでしょう。

たとえば、S&EIは、総GDPの17%も占めており、産業全体のなかで大きく寄与しています。なかでも、NEVは普及率20%を達成する先駆者です。つまり、採用される高ニッケル正極材技術によって、多くのニッケルが使用されることになります。非化石エネルギーは、中国のエネルギーミックスに占める割合を20%にすることが期待されています。

Photo by Denys Nevozhai on Unsplash

また、同計画の下、中国の都市化率は65%を超え、より優れた都市計画と生活条件が開発される予定です。巨大都市と衛星都市をつなぐために、地下鉄、メトロ、都市間鉄道ネットワークがさらに構築されることになります。さらに、この膨大な都市人口によって、安全な食品、衛生的な飲料水、質の高い医療といったニーズを満たす、数々の製品に対する需要が生まれるでしょう。

多くの大型プロジェクトが立ち上げられことになります。2025年までに7,000 kmのメトロ、25,000 kmの高速道路、30 の民間空港が追加され、2035 年までには、計70,000 kmの高速鉄道が建設される予定です。原子力発電設備容量は、2025年までに70GWhに達します。また、大規模な南北水移転イニシアチブの他に、灌漑と洪水軽減プロジェクトの計画もあります。

グリーンな発展に向けたホリスティックな枠組み

グリーンな発展への移行において、同計画ではグリーンで革新的、高付加価値、安全かつ信頼性の高い、部門ベースのサプライチェーンの確立と管理が達成されます。

グリーンサプライチェーン管理枠組みは、グリーンで低炭素、循環型の発展を達成するために中国当局が導入する新たな規制ツールです。この枠組みは、グリーン設計からグリーン調達、生産、流通、廃棄処理に至るサプライチェーンのクローズドループ管理を軸としています。現在、この枠組みには、一般的なガイドラインの既存標準とともに、電池業界のサプライヤーとメーカーにグリーン材料とグリーン製品の提供を要求する予定の新標準が含まれています。グリーン材料とグリーン製品の基準は、資源、環境、人の健康という観点から定義されています。

グリーンサプライチェーン管理枠組みは、グリーンで低炭素、循環型の開発を達成するために中国当局が導入する新たな規制ツールです。グリーン材料とグリーン製品の基準は、資源、環境、人の健康という観点から定義されています。

資源については、資源効率、資源の利用可能性、資源へのアクセス可能性、資源のリサイクル可能性に関する情報を提供することが有資格の“グリーン材料”サプライヤーに求められます。これは、包括的な資源利用と拡大生産者責任に関する新規制でさらに強調される予定です。

環境の観点から、“グリーン材料”は、製品の環境フットプリント、ライフサイクルアセスメント、物質管理などの品質データセットとともに適用されることになるでしょう。

健康に関しては、物質の毒性データが要求されます。これらのデータと情報は、“グリーン設計”の第一段階で検討され、特定の物質や材料の選択、削減、除外が判断されることになります。

ニッケル協会は、最新のライフサイクルアセスメントやカーボンフットプリント情報も含み、その広範な科学的、(エコ)毒性学的データベースと研究によって、ニッケルとニッケル化合物関連の考察に情報提供ができることを光栄に思います。

結論

Photo by Road Trip with Raj on Unsplash

中国の第14次五カ年計画は、提案されたさまざまな戦略の多くの目標を満たすべく、持続可能な解決策を提供していることから、ニッケルとニッケル含有材料に数々の機会を提供することになります。

さらに、毒性と環境毒性のデータ、LCAデータなど、ニッケルとニッケル化合物に関して提供されている豊富な科学的知識は、グリーンで低炭素、循環型の発展におけるニッケル含有材料の役割を確保する上で役立つことでしょう。

ブログ本文(英語版)へ

←ブログ一覧へ戻る

このページのトップへ