ニッケルブログ

「測定されるものは 成し遂げられる」:ライフサイクルデータの重要性

2021年5月21日

気候変動が世界最大の課題であることは周知の事実です。温室効果ガス(GHG)排出量の削減に向け、総力をあげて取り組む必要があり、理想としては2050年までにカーボンニュートラルを実現する必要があります。

どうすれば達成できるのでしょう?

誰もが貢献しなくてはなりません。例えば、消費者は電気自動車に乗り換えることによって、走行中のCO2排出量を大幅に削減できます。また、建物内では、優れた断熱材に投資すれば、暖房や冷房使用時のエネルギー使用量とともに、関連するCO2排出量の削減につながるでしょう。さらに、投資家はCO2排出量の少ないセクターに資金を移行し、産業界は生産工程におけるCO2排出量の削減に向けて、エネルギー効率化に取り組み、再生可能エネルギー源に移行することが可能です。

ニッケル協会の会員企業は、1999年からライフサイクルデータを収集してきました。生産工程におけるエネルギー強度だけでなく、CO2排出量も提示しているデータです。定期的に更新されることから、ニッケル協会会員企業による地球温暖化ガス排出量削減の進捗状況を提示できるのです。このデータによると、1999年以降、ニッケル協会会員企業はCO2排出量を合わせて9%削減しています。

データが更新されることで、例えば、様々な鉱床から採鉱される鉱石や精鉱など、鉱床に応じた採鉱技術や製錬技術が適用されるでしょう。こういったデータの活用例を挙げると、ライフサイクルアセスメント(LCA)の編集、環境の観点からみた製品やサービスの比較、製品環境フットプリント(PEF)の評価、環境製品宣言(EPD)の作成などです。

ニッケル協会は、信頼できる最新のライフサイクルデータを関係者に提供すべく、2018年から2019年の間に会員に代わってニッケル製品(クラス1ニッケル、フェロニッケル、硫酸ニッケル)に関するライフサイクルアセスメント(LCA)を実施しました。

厳格なプロトコルが採用されています。

  • データは独立した第三者により編集されます。
  • データが要請に応じて公開される報告書に掲載される前に、データと報告書は科学専門家による徹底的な査読を経ます。

ライフサイクル管理、ライフサイクルデータ、ライフサイクルインベントリー、ライフサイクル影響評価...

ライフサイクルデータの内容は?

ライフサイクル管理では、完全な製品サイクルを通して、材料、製品、基盤を環境の観点から最適に管理する方法が説明されています。ニッケルの場合には、一次生産(採鉱、製錬、精製)、最初の使用(例:ステンレス鋼、合金、めっき、電池)、エンドユース(例:輸送、エンジニアリング、建設、電子機器、管状製品、金属製品)、および、使用済みニッケル含有製品の管理(すなわち、再使用するためにニッケルの回収とリサイクル)が網羅されています。

ニッケルなどの金属の場合、1製品サイクル(例:ニッケル電池やニッケル含有ステンレス鋼)の終わりにニッケルが回収され、別途再利用される頻度に応じて初期生産に伴う影響を時間の経過とともに償却可能なため、後者は重要になります。つまり、ニッケルの完全な「ライフサイクル」は、ニッケルが使われている製品のライフサイクルとは異なり、通常、はるかに長くなるのです。

ライフサイクルデータには、ニッケルとニッケル製品の全生産段階が含まれています。基礎となるのは、各生産段階のインプットとアウトプットが収集されるライフサイクルインベントリー(LCI)です。LCIは、ライフサイクル影響評価(LCIA)の実施に活用されます。

LCIAは、地球温暖化係数(GWP)など、さまざまな環境影響を算出するものです。これらの影響は、ライフサイクルアセスメント(LCA)実施の基礎となります。

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、環境の観点からみて最高の製品を決定するために、エンドユーザー、規制当局、その他の意思決定者が使用する比較ツールです。

ニッケル協会と同会員企業にとって、ライフサイクルデータの収集と分析は大仕事になります。これは、製品に関する高品質の環境データを公開する努力の一環であり、下流のユーザーが最良の選択を行えるようにするものです。

「測定されるものは成し遂げられる」、気候変動を緩和するという共通の目標に向けて、業界が進歩を遂げていることをデータが示しています。

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