ニッケル協会設立の背景

2004年1月1日―社会構造とそれを支える世界経済は、大抵の人が考える以上の速さで変化しています。ニッケル生産産業はそうした変化に対応するため、2004年1月をもって国際団体の大幅な改革に着手しました。

ニッケルは輸送、エネルギー、建築、通信、食品加工、水処理、医療など数多くの重要分野で進歩を可能にする不可欠な役割を担っています。このことは、世界人口の中で繁栄を享受する層の割合が増えていることとともに、現在のニッケルの堅調な需要見通しを裏付けるものであり、現在の需要が単なる一時的な変動でないことを確信させるものです。

社会が産業に求める要求もまた変化しています。社会を構成する市民は、企業がその活動と決定に説明責任を果たすことをますます求めるようになりました。企業は常に金融資産の使途や職場の安全性、製品の性能について責任を負ってきましたが、近年は政治的方策や規制政策についても説明責任が求められるという劇的な変化が生じました。持続可能な発展という目標を多くの国が政策的に掲げていることにより、こうした傾向がさらに強まっています。

持続可能な発展

持続可能な発展がこれまで以上に重視されるようになったことは、様々な形でニッケルの未来にプラスの影響を及ぼすでしょう。ニッケルを含む製品は生活の質を高める上で鍵を握るものであり、特にエネルギー効率の向上、汚染物質の低減、食品の安全性向上、水質浄化にとって不可欠であり、社会と環境に様々な恩恵をもたらします。一般にニッケルを含む製品は、耐用年数が長く、寿命末期には多くの場合にリサイクルが可能です。したがって、現在使われているニッケルを次世代のための資源と見なすこともできます。

持続可能な発展の課題として、産業界への情報に関する要求もまた大きくなっています。エネルギー効率、環境への影響、有害性の特定、リスク評価、資源効率、廃棄物の最小化、リサイクルなどについて情報を発信し、責任を負うことが産業界に求められています。

さらに産業界は、製品の全ライフサイクルを通じて、つまり原材料の生産から製造、利用を経て、「寿命末期」(再利用、リサイクル、処分)に至る期間にわたって、それら製品の性能に責任を負うことも迫られています。このことはニッケル産業にとって重要な課題です。多くの場合耐用年数が非常に長い何千もの合金や何万もの製品にニッケルが(大抵は少量)用いられているためです。

共同活動の必要性

先進的な企業はこうした高まる期待の背後にある原動力を認識しており、政府機関と協力して、この期待を、意味のある経済的にバランスが取れた、科学的に裏付けられた行動に転換しようと取り組んでいます。どのような行動方針を取るかは、個々の企業の能力に応じて異なることも多いですが、産業界全体で共同活動を行うことが最も有効な対応である場合もあります。実際、下流の製造部門と利用またはリサイクルに関わる産業との協力によって対応が策定されることが多くあります。

共同活動の必要性が高まったことで、産業団体の役割が劇的に変化しました。その結果、産業団体は、政府機関と議論を交わし企業の利益を代弁する役割と、企業が請け負った義務を果たすのを支援する役割という2つの役割を担うことが多くなりました。

課題への対応

こうした課題に対応するため、ニッケル生産産業は国際的な産業団体の体制を再検討し、将来のニーズに合うよう適切に設計された体制を導入しました。新組織となったニッケル協会は今年(2004年)から、従来はニッケル生産者環境研究協会(NiPERA、1980年設立)とニッケル開発協会(NiDI、1984年設立)が独立して行っていた活動を、単一の運営・会員体制で推進します。NiDIとNiPERAはもともとニッケル産業が2つの異なる任務を遂行するために設立した団体です。

  • NiDI・・・ニッケルおよびニッケル含有合金の特性に関する全般的知識を取得、伝達し、エンジニア、建築家、設計者がニッケルをより有効に利用し、新しいニッケル用途を開発することを促す。
  • NiPERA・・・ニッケルがヒトの健康と環境に及ぼす影響に関する知識を取得し、伝達する。元々、科学的に妥当で効果的な職場規制を促進するための情報発信を重視していました。

こうした当初の任務は今もなお重要で必要です。しかし、現在の課題や今後予想される課題に対処するためには、ニッケル産業界は一体となって発展、行動しなければなりません。

  • ニッケル利用ならびにニッケル生産のすべての段階を支えるため、健康と環境科学に関する活動が目下必要とされています。
  • 産業界は製品のライフサイクルを幅広い視野で捉えることが求められており、ニッケル産業もエンジニアや研究者、建築家などの専門家と対話するだけでなく、下流の顧客とも企業対企業として意思の疎通と協調を図る必要があります。
  • 政治的に有効な意見表明を行うためには、ニッケルのライフサイクルを通じて国際的にも国内的にも緊密な協力が必要です。

次の段階は?

ニッケル協会の設立により、ニッケル生産者の共同活動を共通の戦略的方向に向けてまとめ上げることが可能になりました。これは、ニッケル産業が一体となって効果的に行動する能力を高める上で重要な第一歩です。しかし、これは第一歩に過ぎません。

ニッケル協会は、相互利益のため協調して取り組むことができるよう効果的な地域や国内の産業団体を後押しします。科学と技術は国際的なものですが、政治と社会経済はほとんどの場合、国内的または地域的なものです。ニッケル産業はニッケルのメリットを国際的にも国内レベルでも有効に発信する能力を持つ必要があります。

同様に、ニッケル協会は、有力な組織に対し、ニッケルのライフサイクルにおける他の部分、特にステンレス鋼、ニッケル合金、めっき、鋳物、粉末冶金、電池、触媒、リサイクルなどの業界の利益を代表するよう奨励します。強力な協力的パートナーの助けがあれば、ニッケルに関する意見を公平に聞いてもらうことも、意見を政治的に表明することも可能になります。

力強いナレッジ・ベースのニッケル協会、有力な国内の産業団体、および協力的なビジネスパートナーが手を組めば、ニッケルは、社会により良い持続可能な未来をもたらす金属という役割を保持し、さらに発展させることができるでしょう。

会員資格

ニッケル協会には、ニッケルおよびニッケル含有製品の生産者であればどのような企業でも加盟できます。

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