ニッケルのリサイクル

ニッケルのような再生金属は環境と産業双方の利益となるWin-Winのシナリオを創出します。リサイクルは金属産業全体のプロセスに組み込まれている不可欠な要素なのです。金属はその価値のため、質の低下を伴うことなくリサイクルできるものが多い、という理由からリサイクルされます。ニッケルなどの非鉄金属について、この事実は特に当てはまります。

再生利用可能な金属の価値を象徴するかのように、金属にはそれを収集・加工するインフラがあります。現代社会は金属のリサイクルを環境保護活動の一環として捉えるかもしれませんが、実はリサイクル自体が利益性の高い経済部門として長年にわたり存続してきました。スクラップ金属を収集・分別・準備・輸送・活用する経済は、多くの国で多くの雇用を生み出しており、原鉱の採掘・精錬よりも経済的重要性が高いのです。

ニッケルとニッケル含有合金は、元の状態に戻したり、その価値を残したまま異なる形状に変えたりすることができます。例えば、ニッケル含有ステンレス鋼のスクラップを新しいステンレス鋼に変えたり、リサイクル電池から抽出したニッケルをニッケル含有ステンレス鋼に使用したりしています。

ニッケルのリサイクル効率は最高レベル

消費財から入手可能なニッケルで、リサイクルを経て新たなライフサイクルを開始する割合は全体の約68 %を占め(基準年2010年)、さらに15%が炭素鋼ループに入っていきます。それでもなお、約17%が、主に金属品や廃棄された電気電子機器に含有されたまま、埋め立てに回されてしまっています。

出典:ニッケル協会

リサイクルはニッケルのライフサイクルにとって重要な要素であるとともに、地球規模の持続可能性に寄与する重要な因子でもあります。ステンレス鋼といったニッケル含有製品は耐久性に優れ、長期の使用を目的として設計されています。需要が高まる再生ニッケルは、一次生産を補う解決策の一端です。

リサイクルの原則に関する金属業界による宣言

2006年、金属業界はリサイクルの原則に関する宣言を公表しました。ニッケル協会を含む、金属コモディティ18団体が署名したこの宣言の目的は、政策決定者、設計者、製造業者が金属のリサイクル方針を制定する際にはライフサイクルの概念を採用するよう奨励することでした。

金属の多くは劣化のない無限のリサイクルが可能です。これまで、製品に含有されている金属と合金の再生材料含有量は、リサイクル率を高める牽引役として、また環境パフォーマンスの指標として活用されてきました。しかしながら、このようなアプローチは製造や再生金属の使用を非効率化させてしまいかねません。同宣言には、製品の再生材料含有量に偏ったアプローチは環境コストと便益を反映していない旨が示されています。

再生材料含有量アプローチを採用すると、リサイクルに利用可能な金属が、経済的または環境的効率の高いリサイクル・ループではなく、特定製品の製造に回されてしまうことから、経済および環境コストを総体的に増大させてしまう可能性があります。社会への経済的便益を最大限に高めつつ環境に優しい金属の利用を奨励することが目的であるべきです。

最も好ましいのは、耐用年数を迎えた製品の材料フローを考慮したライフサイクル・アプローチでしょう。これによって、リサイクルの増大を目的とした、環境と経済への影響に対する最も正確な評価が可能となります。このようなアプローチをとれば、意思決定者も、非効率性や関連する環境への影響を特定したり、製品回収や材料のリサイクル性を最適化したりすることができるようになります。

循環型経済におけるニッケル

循環型経済という概念は一般的に次のように理解されています。「エネルギーと材料のループを遅延させ、閉鎖し、狭めることにより、資源のインプットと廃棄・排出・エネルギー漏出が最低限に抑えられる再生システム。長持ちする設計・保守・修理・再利用・製造・改修・リサイクルを通して達成することが可能。「取得・製造・廃棄」という製造モデルの直線型経済の対極に位置するもの。」

ニッケルはニッケル含有ステンレス鋼と共に、その卓越した特性とリサイクル効率の高さから、一次材料がいかに循環型経済に寄与できるかを体現しています。耐食性を高めるニッケルによって、より少ない保守でより長持ちする製品に仕上がります。その高い価値がニッケル含有製品の修理に適用され、再利用され、経済的に魅力あるものにするのです。またニッケルは、優れたリサイクル効率によって、ニッケル含有製品の寿命が訪れた後も経済への復帰を確実に果たします。

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