暴露限界値

適切な予防措置を講じればニッケル、ニッケル化合物、合金への職業暴露は十分に管理することができます。

作業環境暴露濃度に関する情報を比較してみると、現在の暴露濃度は、過去の暴露濃度を著しく下回っていることがわかります。呼吸器がんの多発と顕著な関連性が認められたころの暴露濃度は、難溶性ニッケル化合物(特にニッケル硫化物と酸化物)の場合10mg Ni/m3以上、可溶性ニッケル化合物の場合1mg Ni/m3以上でありました(ICNCM、1990年)。

ニッケルの発がんメカニズムはまだ明らかになっておらず、低濃度ニッケル暴露による正確な健康リスクも(もしあるとしても)わかっていませんが、各国政府当局は労働者の適切な保護を目的に設定された最高暴露濃度を勧告値または義務値として採用しています。

これらの職業暴露限界(OEL)は勤務シフトが1日8時間、週5日の平均的な労働者に適用されるものです。いくつかの国は8時間の時間加重平均(TWA)に加えて短時間暴露に対し限界値やガイドラインを設けています。国により、短時間であれば特定濃度までの暴露を許容しています。また、「天井値」濃度を定め、その値を超過してはならないとしている国もあります。特殊な業務に対しては複数の基準値が適用されています。OELの中には厳密に健康を基準とするものや、健康と実行可能性の両方を考慮しているものもあります。各国の職業暴露限界値は、「健康管理ガイド 第3版:表9-1」に示されています。ニッケルに関するOELが採用されていない地域で操業を行っている事業者は、ほかの地域で採用されているOELを検討しても良いでしょう。

なお、日本語版「健康管理ガイド 第3版」では、日本語版追補として、「日本におけるニッケル化合物の規制(平成21年4月1日施行)について」の資料が掲載されています。

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