ステンレス鋼が選ばれる主な理由は耐食性です。ステンレス鋼は耐久性、外観、洗浄可能性が重要な用途で100年近く用いられてきました。そのため家庭、有名な建築物、輸送、食品や飲料の取扱設備、化学工場、医療器具などでステンレス鋼を目にすることができます。
クロムはステンレスの特性を得る上で欠かせない元素ですが、最も広く用いられているグレードの304系は8%のニッケルも含んでいます。この鋼種は、「オーステナイト系」と呼ばれる一群の鋼種に属します。その特徴は優れた延性による成形と溶接の容易さです。また極度の低温でも耐久性が維持できるため、極低温用途にも用いられます。鋼種によってはその特性を高温でも維持するものもあります。
ニッケルは、二相ステンレス鋼群に属するすべての商用鋼種で重要な合金化元素です。二相ステンレス鋼群は一般的なオーステナイト系の鋼種より強度は優りますが、それほど広い温度範囲には使用できません。それでもなお、強度が重視される構造体用途で利用が増えています。
フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系といった他のステンレス鋼群の鋼種の中には、特性を向上させるためにわずかな割合ながらニッケルを含むものがあります。
ステンレス鋼はニッケル一次用途として最大のものであり、2009年にはニッケル生産量の60.9%を占めていました(Pariser、2010年)。同時期に、融解されたステンレス鋼の58.3%がクロム・ニッケルのオーステナイト系鋼種でした。
ステンレス鋼におけるニッケルの役割は「ニッケルの利点」で詳しく説明しています。用途に関する詳細は「材料の選択と利用」の関連する見出しをご参照ください。
力学的特性、耐食性、製造加工に関する詳細は以下の刊行物をご参照ください。今では古くなっているものも中にはありますが、十分なデータを記載しています。