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2005年3月号内容
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1. 材料の進化 by Patrick Whiteway Return
私の好きな科学ライターの1人にStephen Jay Gould(1941〜2002)がいる。彼は世界的に著名な古生物学者であると同時に偉大な伝達者でもあった。
古生物学者として、彼は生物の進化について多くの書物を著し、それは一般大衆にも専門家にも読まれているが、その中で彼は科学的な発見は社会や文化に対して深い影響を与えると強調している。
今回の「ニッケル」誌では,材料の最新とはいえない領域でおきているとはいえ、重要な進化、広くデザインのなかで進行している変化について述べる。
これらの変化は、ニッケル協会にとって特に興味がある2つの分野,すなわち飲料水配管、コンクリート構造で使用される鉄筋において起きており、この分野ではニッケル含有ステンレスが技術者により選択される材料として、ますます多く使われるようになってきた。
アイルランドの技術者は、海に面した河口に架かるコンクリート製高速道路にS31600ステンレス鉄筋を使用することを決定した。アジアでは建築技術者が高層ビルディングで高圧水道配管用にS30400、S31600ステンレスを選んだ。
新しいプロジェクトで耐食性、高強度ステンレスを選択するだけでなく、既存システムの改造を担当する専門家たちも同様である。
例えば、ミズーリ大学のエネルギー管理技術者は、構内の広範囲な配水ネットワークにおいて、設置の容易さ、長寿命、低メンテナンスのメリットから炭素鋼をステンレスに置換えている。
ニッケル含有ステンレスの優位性は耐久性、リサイクル性、ライフサイクルコスト全ての面にある。外洋航行船の設計者には受け入れられていない銅ニッケル材料についての記事を裏表紙に載せた。この材料は、ステンレスが建築や建設設計者に提供するのと同様な利益を、船舶設計者に与えることができる。1967年にAsperida号を建造したKenneth W. Coons 博士の驚くべき先見性は、耐久性に関する価値あるデータとこの材料の船への適合性を我々に与えてくれた。
海洋で30年間使用しても、ほとんど金属損失がないことを示したのみならず 「生物付着」(船のエネルギー効率を低下させるフジツボなど)のないスムースな表面を提供し続けている。すなわち、我々が陸上で目にしている材料の進化は、世界の海洋に同様に広がる可能性があることを示している。
Stephen Gouldは、進化は安定した長い期間の後に続く比較的短い期間の急速な変化の中で進行するものであり、最も順応できるものが生き残るということを我々に教えてくれる。今日、我々が目にしている材料進化は、Gouldの言う生物学的ものとよく類似しているといえる。1つ確かなことは、両者とも社会や文化に対して深い影響を与えることである。
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2. 海洋環境から守る Return
−アイルランドの海に面する河口に架かる橋にステンレス鉄筋を使用−
もし海に面した河口に架けられている橋が、120年間メンテナンスを必要しないとなれば、どれくらい時間と費用が節約できるかということを考えて欲しい。錆びた鉄筋を交換するためにコンクリートを壊す必要もないし、作業員が修理作業をするために交通遮断をする必要もない。
Arup Consulting Engineer社(Dublin, Ireland)はこのようなトラブルフリーな橋をアイデアだけでなく、実際にステンレス鉄筋を使用した橋を設計し建築した。東部アイルランド(DublinとBelfastを結ぶ高速道路の一部)のBroadmeadow橋は2003年6月に開通した。
「厳しい環境 ― 塩水、湿潤と乾燥 ― であり、メンテナンスのためのアクセスが非常に困難な場所であった」とArup社の設計主任であるBurtonは話す。「我々は120年間の設計寿命を保証することが必要であった。また、将来、維持費用がほとんどかからない永続的な解決策があることを顧客に納得してもらう必要があった」
解決策は河口を横断する313mの橋を支える16本の橋脚全てにステンレスS31600
鉄筋を使用することであった。ステンレス鉄筋の使用はArup社にとっては初めてで、「永久的、耐久的な解決策に関して全てを十分にチェックした」とBurtonは言う。
直径12mm〜40mmの総重量169dのステンレス鉄筋の大部分は円筒形骨格を持つ橋脚に使用された。Arup社は十分なリードタイムを持ち材料手当てを確実に行うことにより、予定より早く橋を完成した。
Burtonによればステンレス鉄筋を使用することによる費用の増加は橋の建設費約12百万ユーロの3パーセント以下であり、橋の寿命までの維持・修繕コストが節約できることを考えれば無視しうる出費であるとのこと。
生態学的にデリケートな泥状の平地に損害を与えることなくBroadmeadow橋の橋脚に接近することは困難であることからメンテナンスを必要としない構造は大変重要なことである。さらに加えて、橋は忘れられ、メンテナンス予算は優先リストのはるか下位になるものであると話す。
炭素鋼は川床に打ち込まれる杭や腐食が問題にならない他の構造部分で使用された。例外は、プレキャスト製の胸壁部分および橋のデッキ部から突き出た16mmのS31600級の鉄筋である。鉄筋を繋ぎ,コンクリートを流し込み一体化する。
ここでもステンレスが重要となる。胸壁のエッジ部は道にまく塩による腐食で損傷されやすく、一度弱くなると車やトラックが橋の側面に衝突することにより破壊される可能性がある。
MORE INFO:www.nickelmagazine.org/rebar
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3. LNG配管コストを低減
−高ニッケル合金の使用でコストを低減− Return
大阪ガスが設計した液化天然ガス(LNG)配管システムは大きなコスト削減を実現した。 K93600
(36%ニッケル、残部 鉄)製パイプはオーステナイトステンレスに比べると高価である。 しかし、より少ない長さですみ、海中トンネルの径を小さくできる、従ってシステムのトータルコストは通常のデザインに比べ低減することが可能である。
使用するK93600パイプは、肉厚6mm、外径31.8cmで直径2.4mのコンクリート製トンネル内に設置される。
天然ガスは-199℃に冷却すると液化し体積は約1/600となる。液化することの利点は、LNGをリベリアのような遠く離れた原産地から日本や北アメリカ市場(そこでガス化され通常の天然ガスとして使用される)まで経済的に輸送できることにある。
LNGはニッケル合金ステンレスS30400またはK93600製タンクに積載され外航船で輸送される。港につくと、岸壁に定置した備蓄タンクにLNGを移送する。通常,この作業はタンカーから水中あるいは地下の管路を通して行われる。
極低温のため、パイプラインの熱膨張・収縮は設計や配管ライン建設での重要なファクターになる。通常LNG配管建設には、LPGが配管中を流れるときパイプの膨張や収縮に耐えるようループやベンドのあるS30400ステンレスを使用する。K93600の膨張/収縮係数は広い温度範囲で小さいため、直管で設計することが可能である。
20℃〜LNG温度の範囲で、K93600は1m当たり0.3mmの割合で収縮するが、S30400ステンレスは1mあたり2.8mm収縮する。そのため、ステンレスで必要とされるベンドやル−プがK93600では必要ないため、配管全長を短くすることができる。
MORE INFO: www.nickelmagazine.org/lng
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4. ニッケル・コートした部品が電気的問題を解決 Return
エレクトロニクス産業が解決したと思っていた問題と戦うためにニッケルが使用されている。それは、はんだ表面上に生じる錫ウィスカーとして知られている毛髪状の金属繊維で、電気部品に欠陥やショートを引き起こす。
ウィスカーはペースメーカーからミサイル誘導装置にわたる全ての分野で問題を起こし、何百万ドルもの損害が発生している。ウィスカーは通信衛星の中央処理装置を使用不能とし、地上のテレビ、ラジオ、ポケベル・サービスをノックアウト、宇宙船を高価な宇宙スクラップにしてしまった。
ウィスカーは種々の環境要因下で、錫(カドミウム、亜鉛と同様に)で被覆された表面上に自然に発生する。数日のうちに現れることもあるし、10年かかることもある。
従来の解決法ははんだに鉛を加えることであり、通常はんだは40% 鉛、60% 錫からなる。しかし、EUでは2006年に電子部品への鉛の使用を禁止、中国や他の地域でもこれに追随する動きがあり、産業界では代替物を探している。
ワイヤレス通信装置、コンピュータ用ハードデスク用集積回路のサプライヤーであるAgere System社(Allentown, Pennsylvania, USA)は、はんだ付けを行う前に、電子部品の銅リードに純ニッケルの薄い層をコートするプロセスを考案した。
冶金学者や科学者がウィスカーの原因について議論をしているが、Agere社技術スタッフコンサルタントのJohn Osenbachは錫が銅にボンドされるときに発生する内部応力の結果であるように見えると述べている。
Agere社の解決法は、銅リードが回路ボードにはんだ付けされる前に厚さ10分の7ミクロンの純ニッケル層をコートすることである。「ニッケルは、基本的に銅と錫の間のバリアーとなり、ウィスカー抵抗をかなり改善する」とOsenbachは語っている。
銅リードのコートには入手容易なニッケル・スルファミン酸溶液を使用する。層を厚くすると、より良好なバリアを銅と錫の間に形成する−「緻密であればあるほど良い」とOsenbachは言うが、しかし後工程で接続部はしばしば曲げる必要がある。
MORE INFO:www.nickelmagazine.org/whiskers
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5. 水道管はステンレスに進化する Return
北米では維持費を低減することが最優先事項になっており、配水用にステンレス配管の使用が拡大している。
「地下ユーティリティー・プロジェクトのコストの大部分は掘削に関係している」と、ミズリー・コロンビア大学エネルギー管理部のMathew Riceは述べている。大学では過去5年間、水配管にステンレスを使っている。 「管継手を固定する必要がないことは、ライフサイクルにおいて大きな利点である」
大学では1日平均760万リットルの水を供給しているが、1999年以降、ダクタイル鋳鉄やポリ塩化ビニール(PVC)パイプをステンレス鋼と徐々に置換えている。 「初めはコンクリート被覆鋳鉄配管をPVCと置換えた」とRiceは言う。 「しかし、蒸気トンネルシステムで水ラインを扱うときにPVCでは十分な強度が提供できないことが判明した」。
水分配システムは、5つの井戸と直径3〜30cm、総延長34キロメートルからなる地下配管によりなりキャンパス内の178の建物に水を提供している。 昨年、大学では1938年に建設されたポンプ室をS30400ステンレスで更新した。本年は、もう一つのポンプ室を同様に更新する予定である。
Riceによると薄肉(スケジュール10または20) S30400ステンレス管は取扱が容易で、修正するのが簡単であることから建設コストが節約できる。ポンプ室が食品を取扱うグレード並みの外観になるのでキャンパス・コミュニティの間で水質への信頼感を与えることになるとのこと。また、寸法調整のために鋳鉄管を切断するコストの削減などによりステンレスの高い資本コストを相殺することができる。
「PVC管継ぎ目からのリークのために繰り返される対策を考えれば、ステンレスパイプを溶接することが、いかに将来の維持費を節約できるか言うまでもない」とRiceは言う。
塩素殺菌剤を水に適切に混合して添加すれば、S30400ステンレスはアメリカ上水道協会(AWWA)規定で要求される通常の殺菌処理に耐えることができる。
エネルギー管理部ではパイプ腐食を防ぐため発電所の水前処理設備でもステンレス配管を使用している。 キャンパス冷水システムをサポートする冷却塔でもステンレスが使われており、軟鋼配管から発生するチップ・スケールに関連するメンテナンスとパフォーマンス問題が除去できる。
また、大学では大雨時、雨水が放水路に入る前に、石炭の粉とか他の小さな小片を除去するためにS30400ステンレスメッシュを使うことを検討している。 ライスによると鋼製メッシュが従来の繊維ろ過システムより分離性能が良く、流速も早く取れるとのことである。
2004年、ミズリー大学エネルギー管理部は、信頼性、効率、省エネルギーについて高レベルのパフォーマンスの達成により国際地域エネルギー協会から、「システム・オブ・ザ・イヤー賞」を受賞した。前年の受賞者は2004年7月号で紹介したEnwave地域エネルギー社 (Toronto)である。
MORE INFO:www.nickelmagazine.org/missouri
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6. 新しい燃料電池用ニッケル触媒 Return
小規模な定置型燃料電池には、天然ガス改質による安価な水素生産方法が必要である。 少なくとも5種類の異なるタイプの燃料電池があるが、いずれも発電のために水素と酸素を消費する。水素の大部分は、天然ガスまたはメタンの蒸気改質によって水素を生産するが、工業的には日量トンオーダーの巨大な施設で行われている。
しかし、定置型燃料電池に水素を供給するための課題は大量生産施設よりも、むしろ国内で天然ガスから小規模に如何に水素を生産するかである。このような小規模改質技術はここ数年開発されているが、まだ商業的に広く利用されているものはない。
ドイツの化学会社BASFは、燃料電池用に十分な純度の水素を経済的に生産する方法に重点をおいているが、問題の1つに燃料電池触媒に悪影響を与え、効率と効果を低減する一酸化炭素濃度の低減がある。
既存の小規模改質技術は十分な純度の水素を生成するために高価な貴金属触媒を必要とする。しかし、BASFは改質用卑金属触媒を開発してきた。 ニッケル、銅、他の金属をベースとした新触媒は、貴金属ベースの触媒と同様に作用し、同時に大きなコスト削減が可能である。
開発されたニッケル触媒は、天然ガスの蒸気改質で使われる専用小型燃料プロセッサーに採用された。触媒は、高い活性(数千回ものスタートとシャットダウンの後でさえ)、低劣化率、大気中での変化に対する抵抗を示す。 この開発は、ニッケル触媒が工業規模での水素製造のみならず、小規模燃料プロセッサー用にも使用できることを示している。
新触媒の優れたパフォーマンスは、低価格であることから、家庭での熱と発電を組み合わせた燃料電池システムの商業化を進めるうえで大きなステップとなる。
MORE INFO: www.nickelmagazine.org/catalyst
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7. イタリア製ラジエーターデザインがイギリスで人気 Return
ステンレス製機器は台所のデザインを一変した。ニッケルを8-10.5%含有するS30400ステンレスは、実用的なラジエーターを魅力的な機器に変え家庭のデコレーションに貢献している。
Emmesteel S.R.L.社 (Italy)はここ2年間、肉厚1.5mm、直径25mmのS30400チューブを使用した電熱ラジェーター、温水ラジエーターを製造している。16mm管を使った新デザインもまもなく発売の予定である。
ラジエーターにはイタリア人顧客に好まれる磨き仕上げと主に輸出市場向けのサテン仕上げがある。 Emmesteel社のラジエーターの80パーセントは、イギリスで販売されている。
ユニットは440x780mm〜1,040×1,940mm、8.7〜41.4kgの各種サイズがあり、各々に長さ6〜48mのチューブが使用されている。管状構造のためデザインに柔軟性があり、4本のチューブからなる背高で幅の狭いユニット、浴室の浴槽横の壁に取付け可能な正方形ユニットの製作が可能であり、最大のユニットでは18本ものチューブを使用している。
もう一つのデザインでは、サイズは同様であるが、加熱パイプの上にフラットなS30400シートを掛けたもので、ほとんどソリッドなパネルのように見える。チューブはTIG溶接され、化学処理、クロムめっき、ニス塗装などの表面処理は行っていない。このようにして、Emmesteel社は製造から最終的なリサイクルに至るまで長寿命を保ち環境へのインパクトを確実に低減している。
MORE INFO: www.nickelmagazine.org/radiator
8. 不味い食事を美味にする
−醤油の味を発見した冒険好きな北米のコック− Return
醤油通は、お気に入りの色と風味に出会ったビール愛好家たちと同じくらい情熱的だ。日本では新婚カップルが新しい家庭でどこのブランドの醤油を使うかについて争いになるほど、真剣に醤油を選ぶ。
醤油の品質は醗酵で決まるが,醗酵中は非常に厳しい条件になるため、他の食品加工業では一般的なステンレスタンクは醤油醸造には適しておらず、耐食性のあるファイバーグラスや樹脂ライニング鋼が広く使われている。
問題は醤油中の有機酸と塩化ナトリウム混合物が非常に腐食性があり、醗酵に長時間 (約6ヶ月)かかるため、タンクの保守コストが極めて高いものなることである。
この長年の問題の解決策は案外身近にあるかもしれない。 最近の研究では、モリブデン含有スーパー・オーステナイト系ステンレスS32053が腐食に耐えることを示している。
日本の大手ステンレスメーカである日本冶金工業の小林 裕はStainless Steel Worldで発表した報告で「スーパー・オーステナイト・ステンレスは腐食に対して影響を受けにくいが、S31603はすきま腐食や応力腐食割れの問題がある、2相ステンレスS32506もすきま腐食に影響されやすい」と述べている。
この研究結果に基づいて、ヤマサ醤油(1645年から醤油を製造している老舗)はS32053製の最高390,000リットルの容量を持つ醗酵タンクを100基建設した。2002年10月から実際に使用されているが、腐食はまったく生じていない。
醸造プロセスは何世代も伝えられてきた技術で造られる。まず、蒸した大豆と煎った小麦を発酵のため各社独自の方法で混合する。次に、このマッシュ(麹と呼ばれている)を塩および水と混合する。6ヵ月の発酵プロセスの間、成分は徐々に有機酸、アミノ酸、アルコール類に分解し、その組合せが醤油に独特の風味を与える。
しかし、これらの酸は約17%の塩化ナトリウムを含むPHが約4.7の腐食性のある液体であり、発酵タンクは厳しい状況に耐えなければならない。ヤマサのS32053製タンクが時間の試練に耐えるならば、その市場性には大きな意味がある。工業会によると、年間約80億リットルの醤油が世界各地で消費されている。日本人一人あたりの消費量は年間約9リットル、一方アメリカでは1リットルを下回るが年々増加している。
日本では年間約10億リットルの醤油が生産されているが、食習慣の多様化のため年々わずかに減少している。日本には1,600社程度の醤油メーカーがあり、最大手はキッコーマン、ヤマサ、ヒゲタである。
MORE INFO: www.nickelmagazine.org/soy
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9. 高圧
−ステンレスに進化する都市水道配水システム− Return
高層建築の飲料水や消防用水の配管システムには高い圧力だけでなく地震および風に起因する建物の振動に耐えるという必要条件がある。 建築業者には厳しい納期と流動的かつ未熟練な労働力という難問があり、建築のスピードと組立ての容易さは重要な要因となる。
ビルディングの高層化が進んでおり、技術者はステンレス配管システムが、これらニーズに適合していることからステンレス配管システムに移行しつつある。 世界最新で最高層の3つのビルディング、すなわちTaipei Financial Center(台湾)、Aurora Tower(Brisbane, Australia)、Petronas Twin Towers (Kuala Lumpur)は、高圧ステンレスシステムの最適な例である。
2004年に完成した101階建て,高さ509mのTaipei Financial Centreではビクトリックみぞ付ステンレスシステムや防火および配管設備、最大直径318mmのビクトリック弁やステンレス管を温冷水供給用に使用している。ビクトッリクみぞ付きシステムは2500年に一度おきるような大地震の地震活動にも耐える柔軟性を提供する。
このシステムは標準または薄肉ステンレス用に特別に設計されており、非熟練労働者を使って素早く組み立てることができ清掃や維持が容易なため、溶接、フランジ付け、ねじ切りなど通常の方法に比べると低コストとなる。
Taipei Financial Centreでは、水供給用に耐食性のあるJIS3459ステンレス(日本工業標準規格)、スケジュール10のパイプが使用された。 肉厚9.52mm、径318mmまで対応、耐圧2,065 kPaである。継手は熱膨張収縮に対し十分柔軟性があり、ガスケッは-34℃から100℃に対応するので、このシステムは冷水,温水両方の通水が可能である。
高水圧および振動に適応することからS30400ステンレス管およびビクトリック継手は世界一高いPetronas Towersでも使用されている。
このシステムは携帯電動工具を使って確実に取付け可能なフィッティング付きS31600もしくはS30400ステンレス管を使用するので、溶接やろう付けによる火災リスクがなく、また溶接による接合,ねじによる接合の必要もない。このタイプのシステムは2006年1月に完成予定のBrisbane(豪州)最高層マンションであるAuroraにも適用されている。
MORE INFO: www.nickelmagazine.org/pipe
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10. 100万個の太陽光を利用する
− ステンレスが絶対真空の実現に貢献− Return
顕微鏡は光を必要とする、そして最近、世界で最も強力な光源が稼動した。
Saskathewan大学(Canada)にあるシンクロトロンは地上の太陽の何百万倍も明るい光を放つ電子を生み出す。研究者は種々のデザインや製造プロジェクトのために光を使用する。
ステンレスは真空チャンバーに広範囲に使用されている。10-11 toll(大気圧の100万分の1のさらに100万分の1)の真空を達成するために必要なのは材料の選択であり、やりがいのある目標である。CLSは2004年10月に動き始めたが超高真空目標が達成されるまでには丸々1年かかるであろう。
真空を達成するには、可能な限り多くの分子の除去する必要がある。不純物は電子ビームの速度を遅くするだけではなく、霧が自動車のヘッドライトからの光線を散乱するのと同じように電子を回析してしまう。CLSのオペレーション担当役員であるMark de Jongによれば、一部のシンクロトロンは銅あるいはアルミニウムで造られているが、ステンレスがより一般的であるとのこと。
真空チャンバー部品は250℃で40時間,大きなオーブンのなかで処理される。アルミニウムは150℃で強度を失い始めるが、ステンレスは違う。真空下で部品をベーキングすることを考慮する必要があるが、「ステンレスは、ベーキングの圧力条件で強度を失うことはない」とMark de Jongは話す。
ベーキングは、例えば水蒸気、アルゴン、酸素、ヘリウム、窒素、水素、一酸化炭素など製造途中で吸収されたガスを追い出す。また、金属部品の脱脂プロセスの一部にもなる。
Mark de Jongによれば「内部にはいかなる炭化水素も避けたい、絶対避けなければならないのは硫黄ベース切削油で、それは永久的に残留する」
Johnson Ultavac社(Ontario, Canada)は製造する真空チャンバーのいくつかにS30400を採用している。他の金属に比較して、S30400のコストは低い。また、加工や溶接が容易で、切削できる十分な硬度がある。シンクロトロンの多くのフィッティング、フランジ、イオンポンプ、弁は常にステンレスなので、エンジニアリングを単純化することができる。
MORE INFO. : www.nickelmagazine.org/synchrotronwo
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11. 水銀汚染の低減 Return
−編集者への手紙−
「石炭火力発電所の廃水から水銀を除去する装置でニッケルの役割はあるのか?」
William L. Larsen, PE Iowa, U.S.A.
状況にもよるが答えは「イエス」。しかし、水銀除去で遭遇する問題を十分に理解するためいくらかのバックグランド情報を必要とする。
石炭が燃焼するとき、微粒子状水銀、元素状水銀、水銀酸化物が生成される。微粒子状水銀はフライアッシュにトラップされ電気集塵機のような集塵装置で除去される。元素状水銀は酸化されない限り、あるタイプの吸着剤により除去可能である。酸化された水銀は、湿式スクラバーで除去できる。
水銀除去について学ばなければならないことが多くあるが、煙道ガス中の二酸化硫黄除去に用いられる湿式スクラバーは煙道ガス中の酸化された水銀の大部分を除去する。NOX排出を低減するのに用いられる選択的触媒ユニットは元素状水銀の酸化し、スクラバー内での水銀捕獲能力を高める。既存あるいは建設中の湿式スクラバーの大部分は、燃焼に用いる中〜高硫黄石炭からの腐食アタックに耐えるようニッケル含有合金で製造されている。アメリカで今日燃焼されている石炭の約3分の1は、ほとんどの場合、湿式スクラバ−を必要としない低硫黄規格適合品質の石炭である。しかし、これら石炭の大部分は元素状水銀を放出するので、すなわち既存の装置では水銀が除去できないことを意味している。
水銀排出を低減するための法律はまだ定められていないが、2007〜2009年までには最高90%の削減が要求されると予想される。一方、情報によると10年以内で100基以上の新しい湿式スクラバー設備の建設計画が進行中であり、他の公害管理設備と同様に、水銀管理がこれらの計画に含まれることが必要である。
W. L. Mathay
ニッケル協会顧問
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12. イタリア経済に65億ユーロの貢献 Return
国際的なコンサルティング会社Weinberg Groupによる社会経済研究によると、イタリア経済でのニッケルおよびそれに関連する価値は年間約65億ユーロに達する。この調査はヨーロッパにおけるニッケルの社会経済的な状況を調べるためニッケル協会が依頼したものである。
イタリアはニッケルの重要なユーザーである。2002年の使用量は117,000トンでEU需要の約16%を占めている。ニッケル需要は精製ニッケルと既存ニッケル製品のリサイクルのコンビネーションにより充足されている。イタリアのニッケル産業は比較的小規模であるものの、その価値チェーンによりイタリア経済に重要な影響を及ぼしている。イタリアは、主要なニッケル・ステンレス生産者であるのみならず、これら合金から造られる製品や機器の主要な加工業者でもあり生産者でもある。
イタリア・ニッケル産業界での直接的およびニッケルに大きく依存する一次利用産業,中間および最終利用産業での雇用はおよそ70,000と推定されている。その他約35,000の雇用が収入および供給乗数効果、資本的支出効果を通してイタリア経済に創出されている。
MORE INFO: www.nickelforum-eura.org/italy
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13. ニッケル協会の新メンバー Return
新しくJMC MMC Norlisk Nickel(Russia)、Minara Resources (Australia)が加入した。これによりニッケル協会メンバー会社のニッケル生産量は世界の90%以上となった。
ニッケル協会の他のメンバーは:
Anglo American Brasil Ltda., Anglo Platinum, BHP Billiton, OM Group Inc., P.T. International Nickel Indonesia, Sherritt International Corporation, 住友金属鉱山, Empress Nickel Refinery Limited, Eramet, Falconbridge Limited, Inco Limited, インコ東京ニッケル, 日本冶金工業, Umicore, and WMC Resources Ltd.
MORE INFO: www.nickelinstitute.org/index.cfm/ci_id/139.htm
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14. 中国のファーストフードが成長 Return
中国のニッケルの需要は急速に増加しているが、成長が顕著な経済セクターの1つにファーストフード業界がある。
例えば、中国で大規模に出店を展開しているマクドナルドは、昨年、この成長著しい新しい市場で100軒のハンバーガーレストランを開店した。さらに、エコノミスト誌によると、同社は今年、少なくても同程度の新しいレストランを建設するとのこと。
McDonald Canada社によれば標準的なマクドナルドレストランでは約2トンのS30400ステンレスを使うので、かなりの量のニッケル含有材料がこの意欲的な出店計画により必要となる。
S30400ステンレスは耐久性があり、清潔に維持できること、食品への味移りがないことから食品調理用設備の表面材料に多く使用されている。
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15. 火星で発見されたニッケル鉄隕石 Return
NASAの火星探査機オポチュニティーはニッケル鉄隕石を発見したが,これは地球以外の惑星ではじめて確認されたものである。探査機に積み込まれているスペクトロメータによる分析によると、くぼみのあるフットボール大の物質は大部分が鉄とニッケルからできている。地球に落下した隕石の一部に類似した組成が見られる。
オポーチュニティの科学機器主任調査員であるCornell大学(NY)のSteve Squyers博士は「これは大きな驚きである。火星以外のどこからか来た岩の上で、我々の装置を使うとは思ってもいなかった。鉄隕石がどこから来るかについて考えてください。金属コアと岩石からなるマントルに分化するのに十分大きかった惑星が破壊されたもの、あるいは微惑星体」と話している。さらに「火星には、鉄隕石よりも岩石状隕石が多く衝突している。我々は平原の部分で多数の岩のかけらを見てきたが、そのうちの一部は隕石という可能性がある」
「隕石を調査することはNASAの重要な科学的課題の1つである。隕石が大量に火星に存在するかどうかについて調査することは新しい科学の可能性を開く。それはロボット,そして人間による火星への往復探査に対するインセンティブにもなる。火星は予期できない科学的な“金(Gold)”を我々に与えてくれる。この最新の発見は我々の探査機を使った移動探査の価値を証明した」とNASA主任科学者ジム・ガービン博士は述べている。
MORE INFO: http://marsrovers.jpl.nasa.gov/newsroom/pressreleases/20050119a.html
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16. 順風満帆 Return
Asperida号は恐らく現存する最も古い銅ニッケル製のボートであるが未だに素晴らしい状態にある。
ボート設計者は外洋航行船の船体材料を選ぶとき、多くのことを考慮する必要がある ― 例えば、船が水中でほとんど抵抗なく航行できるように船体表面を平滑にすること、重量を最小にすること、メンテナンスを容易にすることなどである。デザイン上でのこれら項目がボートの可能性、オペレーティングコスト,維持コスト低減に役立つことをW. Coons博士は学んだ。
1990年代にAlabama大学化学工学科教授であったCoonsは熱心なヨットマンであり、木、鋼、アルミニウム、ファイバーグラス製のボートのオーナーであった。しかし、彼はそれら材料の全てに満足できず代替材料を評価することに数十年を費やした。
彼はヨットの後部に試料片をつけて牽引し、腐食に対する抵抗を調べた。この結果をもとに1966年、銅ニッケル合金C71500(29-33%NI)でヨットを建造することを決断した。
今日のボート設計者は、この材料を自信を持って使用できることに対してConnsの決断に感謝すべきである。
Coonsのヨットは、S.M.van der Meereが設計し、1967年Trewes International社によりオランダで建造された。建造方法は、炭素鋼を用いた場合とほとんど同一であったが、溶接工の訓練を必要とした。船体板厚は4mm、溶接には29%ニッケルを含有するW60715を使用した。美観上、船体の喫水線より上部を塗装した。
船体の初期コストは炭素鋼で造るのに比べ10倍であったが、年間メンテナンス費がかなり安かったことから、5年間で高価であった初期コストに引きあった。
5回ほど転売された後、Asperida号は現在の所有者Waldemar CieniewiczとAnna Muriglanの手に渡った。二人は2004年にNew Jerseyでヨットを改装・修理したが、船体の平均厚み(銅センター(CDA)の測定法による)は3.86および3.96mmで建造時の厚みに近い数字であった。
「C71500は、プレジャーボート用だけでなく、商用や軍事用船舶の船体材料として真剣に考慮すべきであることは明らかである」とCDA副理事長のHarold Michelは話している。
MORE INFO: "The Asperida, a Copper-Nickel Sailboat after More than Thirty Years in Seawater," by Harold T.Michels and Kenneth P. Geremia, paper no. 05238, NACE Corrosion/2005, NACE International, Houston, Texas, U.S.A., 2005.
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